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東北バスツアー、私たちは見てしまった
第1章 東北バスツアー
昭和四十七年の夏、私は夫と共に、Y旅行が主催する三泊四日の東北バスツアーに参加していました。正直なところ、集合場所の銀座そごう前に着いた時は、少し後悔したものです。家族連れの騒がしい声、すでに酒気を帯びた赤ら顔の職場旅行らしいオヤジたち……退屈な旅になりそうだと、肩を落としていたのです。

けれど、そこに現れた三人の高校生グループが、私の気持ちを一変させました。中でも特に目を引いたのが、飯田邦夫くんという少年でした。背が高く、少し痩せ気味ながら整った顔立ち。本人は気づいていないようですが、確かに「イケメン」という言葉がぴったりくる風貌です。十七歳になるかならないか、まだどこかあどけなさが残るその横顔に、私は思わずほほえんでしまいました。

そして、集合時間ぎりぎりに駆けつけた一人の女性——佐藤雪乃さん。花柄のミニワンピースがよく似合う、四十歳前後と見える女性です。スタイルが良く、何とも言えない華やかなオーラをまとっていました。夫が「ホステスじゃねえか?」と呟いたのも、無理からぬことでした。

当時は東北自動車道がまだなく、一般道をのんびりと進む旅です。バスガイドさんの提案で、車内で自己紹介が始まりました。高校生たちが名前を告げる中、邦夫くんの爽やかな声が耳に残りました。夫も「もてるんじゃねえか」と感心するほどです。

雪乃さんの自己紹介の時、酔ったオヤジが「ハハハ、いいねえ、美人さんは」と下品な拍手をしました。周囲からは「嫌ねえ」という囁きが漏れ、雪乃さんは少し困ったような、しかしどこか達観した微笑みを浮かべていました。その時、私はふと気づいたのです。彼女の視線が、ほんの一瞬、邦夫くんのほうへ流れたことを。
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