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摩耗
第1章 摩耗
日が高くなり、草木が一段と色鮮やかに感じられる。そんな景色の中を黙々と歩く女は、ただ漫然と歩いていたわけではなかった。
女に目的地はない。しかし辿るべき道は決まっている。自分の前方を行く女性を追えば良いからだ。残る作業は、この女性にどう近付き、いつ接触するか、それだけだった。

対象の様子を見ながら、もう一人自分の近くを歩く女がいなくなるのを待つ。しかし、道を何度か曲がっても女がいなくなる気配はない。
女は次第にもう一人の方が気になり、軽く視線を向ける。身なりにも挙動にもおかしなところのない普通の女だったが、前方の女性の進む道は決して外れない。

女の方へと近付く。相手も同じ考えだったらしく、二人は並んで歩く恰好となる。
天空から眩しい日差しが瑞々しい緑に降り注ぎ、木陰を取り囲み明暗の対比をなしている。

「用事が一緒みたいですね」

「実は今少し変わりました。たぶん、そちらも」

「はい、することはあまり変わりませんけど」

「話が早いですね」

会話をそれ以上続けることなく足を動かす。もう前方の女性を追うことは止めて、途中で曲がり全く別の道へ進んでゆく。

空いているらしい土地に物置がぽつんとある。大きさは大の大人が二人程入れるくらいだ。
そこに女達は近寄って戸に手をかける。

戸を開く直前、

「日向、です」

「若葉、です」

名前を告げる。

真っ白い日光と新緑の葉がぶつかる、二人の名前をそのまま形にしたかのような眩しい光景。そんな景色を尻目に物置へと入り込む。

暗闇に身を潜めるなり、相手の体を掴んで自分の方へ引き寄せる。相手の方を向いて掴み合っているため密着することになる。

顔を寄せると相手の吐息を肌に感じる。
目の前の女を固定したまま唇を重ねる。舌を動かすと相手の口内に涎が混入する。一人分の幅の口内で二本の舌が交差する。必然的に舌を絡め合わざるを得なくなる。互いを食むように吸い付いていると涎がこぼれる。

涎が口元を伝って下顎を汚し始める。
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