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美香・透明な婚姻
第6章 禁断の境界線 〜ふたりの男と濡れた肌〜
激しく揺れていたテントの幕が、嘘のように静まり返る 。じりじりと重い音を立ててジッパーが開いた 。外へと這い出していったのは、赤ら顔のよし兄だ 。彼は外にいた秀隆くんを一瞥すると、

「秀、そこにいたんか。暑いな。熱中症になりそうや」と低くぶっきらぼうに呟いた 。そのまま荒々しくクーラーボックスを開け、取り出したノンアルコールビールを喉を鳴らして一気に煽る 。その海水パンツの一部は見るからに大きく盛り上がったままで、未だ猛る性器の余熱を隠そうともしていなかった 。

秀隆くんが、そっとテントの中を覗き込んできた。濃密な人いきれの中に、陽に焼けたビニールの匂いと、日焼け止めの甘く重苦しい香りが混じり合って淀んでいる 。その空気の底で、私は横を向いたまま、静かに横たわっていた 。

身につけた水着に乱れはなかったが、身体の下に敷かれたバスタオルだけが、激しい営みを物語るように著しく波打っている 。先ほどまでここで男女の狂おしい肉交が行われていたとは到底信じられないほど、テントの中はただ、しんと静まり返っていた 。

その日の夜、時計の針が二十二時を回る頃 。

昼間の賑やかな生活音は完全に途絶え、家の中は深い静寂に包まれていた 。いつもなら、私の方から「秀くん、今日は来る?」と密やかな誘いの声をかけるはずだった 。けれど、今夜に限ってはその言葉を飲み込んだ 。

これからよし兄の家へ行く準備を進める、その心を透かされるような不安が胸をよぎる 。私は静まり返った廊下を、忍び足で浴室へと向かった 。

白く煙る湯気の中、シャワーの飛沫を浴びる。衣服籠には卸したての真新しいブラジャーとパンティを置いておいた。妖艶な紫色の揃いのレース下着。ここで眠るときは浴衣の下には何も身につけないのが常だったから、これから私が夜の闇に紛れてどこかへ向かおうとしているのかは、誰の目にも明らかだった。

不意に、浴室のすりガラスに外からの人影が落ちた 。心臓が跳ね、私は驚いてシャワーをぴたりと止める 。

「義姉さん、僕です」

すりガラスの向こうから低い声が返ってきて、「秀くん、どうしたの……?」と、私は戸惑いを隠せなかった。

「義姉さん、入りますね」

彼は着ていたシャツとサーフパンツをその場に脱ぎ捨てて全裸になると、後ろ手に浴室の扉をぴしゃりと閉めた。

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