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名馬の城
第1章 序章
時は戦国。
三河国梓弓城。

信康は馬を止めて、眼前にそびえたつ山の頂にあるその城を見上げた。

もともと徳川配下の城だったが、武田軍に攻め落とされてしまい、今は武田の城となっている。

狙うは梓弓城の奪還。
三河と信濃を結ぶ街道沿いにあるこの城はなんとしても奪い返したいところだ。


総大将は徳川家康の長男、信康である。
血気盛んなこの若武者は逸る気持ちをおさえきれず、興奮で全身が震えていた。

すると乗っている馬が重心を後ろに傾かせ、長い尻尾を振った。
まるで気をつけろ、と言わんばかりだった。
”年鹿毛”と名付けられたその馬は、信康に与えられた初めての馬で、千里の馬と言われ、初陣を飾るのにふさわしい馬であった。

信康は目を閉じて一呼吸置いた。

「よし、行こう!」

梓弓城を目指して勇ましく前進した。
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