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愛と犠牲の果て~人妻を堕とす愛人契約~
第109章 生贄のプロローグ ―汚されたルージュ、奈落への署名―
キーボードを叩く二人の耳には、真壁の待つ18時30分という破滅の時間が、一秒ずつ冷酷に近づいてくる足音がはっきりと聞こえていた。
キーボードを叩く音や電話の応対の声が響くオフィスの中で、二人の間には重苦しい沈黙が横たわっていた。時計の針が進むたびに、真壁が迎えに来る18時30分という非情な境界線が近づいてくる。澪は手元の時計を何度も見ては、胸を締め付けられるような予感に震えていた。
17時を少し回った頃、重苦しい足音が澪のデスクへと近づいてきた。
「澪くん、ちょっといいかね。先ほどの件で、至急目を通してサインをもらいたい書類が届いたんだ。また社長応接室まで来てくれ」
鬼頭の声に、澪の肩がビクッと跳ね上がった。デスクの陰からこちらを凝視している雄一の痛切な視線を感じながらも、澪は拒むことなどできず、ただ小さく「はい……」とだけ答えて立ち上がった。
真壁との3日間が目の前に迫り、ただでさえ心が張り裂けそうなほどに苦しいというのに、さらに追い打ちをかけるように鬼頭の呼び出しがかかる。澪は鉛のように重い足取りで、再びあの密室へと足を踏み進めた。
重厚な扉が閉まり、完全に遮断された密室の中で、鬼頭はソファに深く腰掛け、テーブルの上に一通の厚い書類を滑らせた。その表紙に書かれた文字を目にした瞬間、澪の顔からすっかり血の気が引いた。
「驚くことはない。先日も話した通り、君のAV出演に向けた具体的な準備を始めるための契約書だ」
鬼頭は不敵な笑みを浮かべ、淡々と説明を始めた。
「知っての通り、今は『AV出演被害防止・救済法』という法律があってね。我々のような制作側も, 法令を厳格に遵守しなければならない。この法律では、契約を結んでから1ヶ月間は撮影を行うことができないと定められている。さらに、撮影がすべて終了してから4ヶ月間は、その映像を販売・配信することも禁止されているんだ」
鬼頭は贅沢な万年筆をもて遊びながら、冷徹に言葉を続けた。
「つまり、どれほど急いでも、契約から実際に世に出るまでには最低でも5ヶ月以上の期間が必要になる。だからこそ、半年ほど先のデビュー、いや、発売に向けて、今のうちから準備を動かしておく必要があるんだよ。この契約書は、撮影日程の確保や事前調整を行うための正式な合意書だ」
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