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シアター"名画座"で逢いましょう
第16章 "名画座"の崩落

"名画座"へ向かう朝倉と日菜子の背後から大型重機を積んだトレーナーが追い越してゆく。
先にドリルを装着した重機…
それはビルを解体する時に使われるもので、朝倉はイヤな予感がした。

「急ごう」

朝倉の歩調が早くなる。

「待って!」

ピンヒールを履いている日菜子は彼の歩調についてゆくのがやっとだった。

ようやくたどり着いた"名画座"の前は、静かな佇まいとは似ても似つかず、仰々しく保全のシートが張り巡らされていて、工事関係者以外は立ち入り禁止だとばかりにガードマンが規制していた。

「待って!どうしても壊される前に"名画座"の最後の姿を目に焼き付けておきたいんだ!」

ガードマンに制止されるのもお構いなしに、保全シートを捲って中に入り込もうとする朝倉。

「あなた!危ないわ!
ほら、ガードマンさんが入っちゃ行けないって言っているのだから、遠目でいいから"名画座"の最後を見届けてあげましょうよ」

前からはガードマンに押し返され、背後から日菜子に引き戻され朝倉は「ダメだ!何がなんでも"名画座"の前でするべき事があるんだ!」と駄々っ子のように喚き立てた。

その喧騒を聞き付けて、保全シートの中から『安全第一』と書かれた黄色いヘルメットを被ったガタイのいい労働者が姿を現した。

「おいおい、なんの騒ぎだ?」

「あ、現場監督。すいません、この男が中に入れろと言ってきかないものですから」

作業を円滑に進めるためのガードマンなのに、作業を中断させてしまったことを詫びて、ガードマンはペコペコと頭を下げた。

「ダメだよ、あんた。これから重機で解体が始まるんだから、少し離れてくれなきゃ困るよ」

そう言って現場監督の熊のような男は、朝倉の顔を見て「あれっ?」とすっとんきょうな声を上げた。
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