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シアター"名画座"で逢いましょう
第16章 "名画座"の崩落
離婚して、広と暮らしていたマンションを逃げ出すように、少しばかりの衣料だけをキャリーバッグに詰め込んで、朝倉の狭いアパートに駆け込んだのはひと月前。
離婚したとはいえ、朝倉との入籍はまだであった。
離婚届を出した役所の係の男に告げられたように、名義変更や書類関係が多くて目の回るような忙しさであった。
『離婚ってバイタリティーがないとしどいものなのね…』
日菜子には朝倉というパートナーがすでにいてくれたから、どんなにしんどくても頑張れる気力が沸いてくるけれど、これが行く宛もなく、頼れる人もいない離婚だとしたら、精神が病んでしまうかもしれないと日菜子は感じた。
一日中、あちらこちらを駆け回って肉体的には辛かったけれど、夜ともなれば朝倉が疲れた体を癒してくれた。
「今日も疲れたんだろう?マッサージしてやろうか?」
朝倉が夜毎日菜子にベッドに横になりなよと誘ってくる。
最初の数分だけ朝倉もせっせと日菜子の体をマッサージしてくれるが、やがて彼の手の力が抜け、肩を揉む手は愛撫へと移り変わる。
彼の大きな手のひらが、日菜子の肩を掴み、最初の内は凝り固まった筋肉をほぐすように指がぐっと入り込んでくる。
「あなた、ほんとにマッサージが上手だわ」
「そうだろ?派出所では巡査長の肩をいつも揉まされているからね」
ぐいぐいと強い力で押し込まれる。
好きな男に肩を揉まれるって気持ちいい。
「警官をクビになったら整体とか習おうかな。ちゃんとした整体師免許を取ってマッサージ師になるのも悪くはないな。
でも日菜子以外の女の体に触ったりしたら、焼きもちを妬いてくれるかな?」
これもまた毎度のセリフ…
よくいつも同じセリフが言えるわねと、そんな話をフフフ…と笑いながら聞き流す。
『あああ…これが幸せってやつよね』
そんなことを思いながらら揉んでもらっていると、彼の手が首に触れてくる。
『うふふ…我慢できなくなったのね』
「日菜子、首もすごい凝ってる」
首の後ろ、うなじのあたりを朝倉の手が行き来する。
「んん…っ」
ぞくっと電気が走るような快感が背筋を駆け抜けてゆく。
朝倉の指が柔らかな首もとを撫で付けるたびに、思わず声が漏れてゆく。

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