この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
シアター"名画座"で逢いましょう
第13章 不倫から始まる愛
ネクタイを結びながら「今夜は帰りが遅くなるかもしれない」と、不味そうにコーヒーを喉に流し込む夫の広は妻の日菜子にぶっきらぼうに告げた。
「今夜は?今夜も、の間違いじゃないの?」
夫婦でありながら、夫婦としての会話は「今夜は遅くなる」という毎度の会話。
スキンシップさえほとんどない。
もうかれこれ五年は夫の肉体を拝見していないし、日菜子だって裸体を夫の目にさらすこともなくなっていた。
夫婦というよりも、単なる同居人。そのような形容詞がピッタリな二人だった。
「当然、夕飯は済ませてくるんでしょうね?」
「ああ、接待だからね。おそらく食事にも同席しなきゃ不味いだろ」
「いいわよ、お仕事頑張ってきてね」
「えっ?」
「えっ?じゃないわよ。ほら、お仕事に遅れるわよ。いってらっしゃい」
夫の広は拍子抜けしてしまった。
てっきり目くじらを立てて「最近は食事も一緒にしてくれないのね」とイヤミの一つでも返してくるはずなのに、不倫していると白状したからか、イヤミさえ言わなくなった妻の日菜子に困惑した。
「不倫相手とデートじゃないのかと疑わないのか?」
「別に…あなたはあなた。私は私ですもの」
その言葉の陰に「あなたが遊ぶんなら私だって遊ばせてもらうわ」というニュアンスを読み取れたが、まさか清純な妻に限って不倫など出来はしないだろうと、広は頭に浮かんだ考えを打ち消した。
「ほら、早くしないと本当に遅刻しちゃうわよ」
妻の日菜子に急かされて、スーツのジャケットを羽織ると「じゃあ、行ってくるよ」とマンションを飛び出した。

作品検索
しおりをはさむ
姉妹サイトリンク 開く


