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シアター"名画座"で逢いましょう
第9章 独りだけの名画座
一度だけのアバンチュール…
そう思って見知らぬ男に抱かれた日菜子。
あの日から数日が経ち、また夫にも構ってもらえないつまらない日常が日菜子に戻ってきた。
男との甘い時間を過ごした20代の若い体は、あの甘美な時間を忘れる事が出来ずにいた。
あの日、日菜子を抱いた男は、ついに日菜子と連絡先を交わそうともせず、ラブホテルから一歩外に踏み出すと「じゃあな」と一言だけ告げて、すっかり日が暮れて暗くなった夜の闇に消えていった。
これは不倫で、ゆきずりの関係…
そう思ったからこそ、日菜子からも「連絡先を交換しません?」と申し出ることが出来なかった。
頭では、いけない関係なのだから彼とは二度と会ってはいけないとわかっているのに、どうにも体が疼いて仕方ない。
『俺は度々あの"名画座"に出入りしているから、機会があればまた会うこともあるだろうさ』
そう言っていた男の言葉が、頭の中でグルグルと回っていた。
逢いたい…
またあの人に抱いてもらいたい…
そして、もう一度彼に逢えたのなら、今度こそちゃんとお付き合いをして欲しいと申し出るつもりだった。
行かなきゃ…彼に逢うためにあの映画館に行かなきゃ…
そう思って、もう一度一緒に行って欲しいと佳純に連絡をしてみたら「ああいうところは一度経験するだけで充分じゃない」とつれない返事が返ってきた。

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