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エロ本を拾っただけなのに <女子高生・優香>
第12章 《見えない王子》
季節は巡り、夏が訪れていた。

中間テストから数ヶ月。
優香と「名無しさん」との奇妙な交流は、途切れることなく続いていた。

蝉の声が降り注ぐ夕暮れの公園。
優香は額の汗を拭いながら、いつものベンチの裏に手を伸ばした。

(あった……)

指先に触れる紙の感触に、優香の表情がふわりと緩む。
学校での人間関係や、親との些細な衝突。
そんな日常のストレスも、ここに来れば忘れられた。

この数ヶ月で、二人のやり取りはより密接なものになっていた。
性的なリクエストと供給はもちろん、何気ない日常会話も増えていたからだ。
その中で優香は、自分がソフトテニス部に所属していることや、練習がハードであることなどを、愚痴交じりに彼に伝えていた。

優香は木陰に入り、手紙を開いた。

『暑くなってきたね。
 この前、ソフトテニス部の練習がきついって書いてたけど、バテてない?
 無理しちゃだめだよ。君は頑張り屋さんだから心配だ』

冒頭の優しい言葉に、優香の心が癒やされる。
そして、手紙の最後には、いつもと違う一文が添えられていた。

『そういえば、僕たちはまだお互いの名前も知らなかったね。
 ずっと「君」とか「そっち」って呼ぶのも、なんだか味気ない気がして。
 もちろん、本名を教えるのが怖かったら、ニックネームでもいいよ。
 僕は「さとる」と言います。
 君のことは、なんて呼べばいいかな?』

(さとるさん……)

優香は口の中で、その名前を転がしてみた。
響きが、優しくて知的で、彼にぴったりだと思った。

(ニックネーム、か……)

適当な名前を考えることもできた。
でも、嘘をつきたくなかった。
彼――さとるさんは、私の恥ずかしい部分も、汚い欲望も、すべてを受け入れてくれている。
そんな彼に、偽りの名前を教えることは、裏切りのような気がしたのだ。

その夜、優香は机に向かい、ペンを走らせた。

『さとるさん、はじめまして(笑)。
 私の名前は「ゆうか」です。
 ありふれた名前ですけど、気に入ってくれたら嬉しいです』
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