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誰にも言えない、紗也香先生
第6章 アリス
午後の階段――静寂の中に、三人の影がゆっくりと伸びていた。

先頭を歩くのは、無言の案内役・アリス。
背筋を真っ直ぐに伸ばし、手には私の首元に繋がる青いチョーカーのチェイン。
その銀の線が、まるで儀式のためのリボンのように、静かに揺れていた。

アリスの髪は艶やかな銀。
黒の燕尾服に包まれた背中はどこか冷たく、だけど信頼できる静けさを湛えていた。
彼女は何も語らず、ただ一定のリズムで階段を登っていく。

そのすぐ後ろを、私は震えるピンヒールでそっと一段ずつ進めていた。
一歩ごとに、コツン、と控えめな音が階段に溶けていく。
赤いベルトが腰を締め、黒いものが、花の奥でひそやかに存在を主張していた。
深く息を吸うたびに、身体の奥まで熱がゆっくりと巡り、
まるで“別の私”が目を覚まそうとしているみたいだった。

後ろから聞こえるのは、リザのヒールの音。
そして、柔らかな声。

「大丈夫?」
笑みを含んだ悪戯っぽい声で、リザが私の背中越しにささやく。

彼女の視線が、私の秘めた場所にそっと触れてくるようで、
返事なんて、できなかった。
ただ、頬が火照り、胸の奥がきゅっと震えた。
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