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天狐あやかし秘譚
第124章 二転三転(にてんさんてん)
まずい・・・

そう思った時、本陣から青く清浄な光がほとばしるのを感じた。

「種々におわします 掛けまくも畏こき 言離(ことさか)の神
 その大前に拝み奉り いざ禍事も一言 善事も一言
 ここに与え給えと 恐み恐み白す」

それは祝詞だった。
振り返るとその圧倒的な清き光の中央に大幣を握りしめ、一心に祈る烏丸がいた。

「おい!鍵岡!」
「ああ」

左慈や鍵岡だけではなく、その意味するところはここにいる京都支部の陰陽師全てが知っていることだった。
一瞬、全ての陰陽師の動きが止まる。

「へえ・・・なになに!?何をしようとしているの??」
オキナだけが興味津々といった顔で、事の成り行きを見守っていた。オキナには自身の敷いた布陣に絶対の自信があったのだ。たとえ、どのような強力な術式であろうが、自分の持つ足玉によって瞬時に回復でき、無限の瘴気の源たる道返玉で戦況はあっという間に立て直せる。何となれば道返玉はまだ本来の力の2割ほどしか使っていない。

戦況などいくらでも押し返せる。

その気持がオキナの余裕を生んでいた。
そして、何より、オキナは気づいていたのだ。

本陣中央に立つ男がこの場で最も呪力が高く、その男がかなり派手な術式を使おうとしている。しかし、それは陽動だ。

その背後で2つの影が夜陰に乗じて移動している。
ひとりは烏帽子をかぶったそこそこの力を持っていそうな術者
もうひとりは大した呪力のない女・・・多分あれが緋紅に再三煮え湯を飲ませたという『綾音』とかいう小娘だろう。

何をコソコソしているか知らないが・・・
そちらの思う通りにはいかないよ
ここであの『綾音』とかいう奴を殺してしまえば、
きっと緋紅は悔しがるだろうなあ

そんなことを思い浮かべていたらニヤリとした笑みが零れてきた。

本陣前の青い光はますます強くなり、天を貫くほどの光の柱となっていた。

見たことがない術式だ。
一体何を?

霊力量だけ見ればちょっとした神宝の一撃にも匹敵するほどの力が集中しているのに気づく。ある程度時間がかかる『祭祀』を介した術式であれば、人であってもそれなりの出力を出せることは知っていた。

死ぬ気はしないが、面倒なことになるのはやだなあ。
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