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天狐あやかし秘譚
第124章 二転三転(にてんさんてん)
☆☆☆
「ええっと、こういう時なんて言うんだっけ?
 かっこいいセリフあったよね!?」

オキナが手を大きく広げてニコリと笑う。その背後に魑魅魍魎たちを背負ってさえいなければ、その笑みは多くの人・・・特に男性を虜にするほどの無邪気で愛らしいものだった。

だが、今は状況が違う。誰もそんなオキナの笑みに騙される者などはいなかった。周囲を取り囲む陰陽師たちが、一斉にそれぞれの術式を発動する。

火の術式で増幅された篝火の炎が龍と化し、
土の術式で勧請された権能が大地から鋭いトゲを突き生やし、
水の術式が周囲の水蒸気を操り術者たちを守るベールを形成する。
木の術式が天に雷を招き、
金の術式を纏った剣や弓矢、槍や独鈷を持った術師たちが一斉にオキナに襲いかかった。

「あ!そうだ、思い出した!
 これだよ!
 『It’s Show Time!!』」

オキナが声高に叫ぶ。
それと同時に背後の闇が一斉にそこから溢れ出した。

のたうつ数百の闇色のヘビが、炎の龍にまとわりつきそれを喰らい尽くす。
黒々とした影のような大男が幾人もオキナの影から立ち上がり、大地のトゲを踏み潰した。
黒板を爪で引っ掻いたような不快な音を撒き散らすカラスのような鳥が飛び回り、水の結界がまたたく間に打ち消されていく。
天から降り注ぐ雷は溢れかえった瘴気で拡散し、
金の術式を纏った数十の陰陽師たちに猿のように飛び跳ねる小さな鬼たちが襲いかかった。

「何あれ・・・」
その光景はさながら地獄の蓋が開いたかのようだった。陰陽師たちも次々と術を繰り出し、応戦してはいるものの、なにせ相手の数が多すぎる。

そう言えば、ダリがかつて言っていたことがあった。

『鬼道とは魑魅魍魎が無限に跋扈するところ。その入口が開くことは冥府が開くよりも厄介だ』と。

河西佳苗がかつて引き起こした女怪事件のときは、開いた鬼道を塞ぐためにダリが時を止める結界を張り、更にフルパワーのダリと土御門が協力してやっと塞ぐことができたのだ。

私の背筋に冷たいものが伝う。女怪事件の時に河西が開いた鬼道からは一気に数万の女怪が吹き出した。それは女怪の持つ『増える』『呼び寄せる』という性質があったからというのもあるが、それだけの怪異を現世に導くキャパシティがあの『道返玉』にはあるということも意味している。
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