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第37章 秋桜（コスモス）の夢

　騒ぎを聞きつけたのか、奥から女将が出てきた。遊廓の女主人もやり手も元を正せば、皆が引退した妓生である。女将もなかなか年齢を感じさせない美貌の大年増だ。




　賛はホッとして、目深に被っていた鐔広の帽子(カツ)を人差し指で心もち持ち上げる。帽子から顎に垂れ下がったブルートパーズ（黄玉）を連ねた紐がシャラリと涼しげな音を立てた。