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第1章 レディスキッチン 園
 その後の食事会は滞りなく終わった。

 両親は、今日の緊張のせいだろうと納得していた。

「まったく、彩乃は小さい時から、何かあるたびに調子悪くなっていたものなあ」

「そうそう、小学校のの学芸会の時、一言セリフを言うだけだったのに、そのあと三日くらい熱を出していたわねぇ」

 両親は話しながら笑っていた。

「あっ、ひど~い!」

 彩乃は言うとぷっと頬を膨らませた。その顔を見て両親がまた笑う。

 ……そうよ、これが普通だわ。さっきのわたしはどうかしていただけよ。あ~あ、わたしも彼氏を作んなきゃなぁ。

 彩乃はそう思った。そうすれば、変な事を考えなくなるはずだ。


 女同士であんな事を……


 一瞬、エイコとキスしている自分の姿が浮かんだ。

 彩乃をそれを打ち消すように、グラスのワインを一気に飲み干した。

「おお、良い飲みっぷりだな、彩乃」父親が感心する。「もう一杯行くか?」

「うん!」彩乃は変な事を忘れるためにも飲みなかった。「もう一杯だなんて、まだまだ飲めるわ!」

「お父さんも彩乃も無茶は駄目よ」母親が心配そうに言う。「……お酒飲みは、お父さんに家系を引いたのねぇ……」
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