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爛れる月面
第1章 違う空を見ている
 今は言って欲しくなかった徹の言葉に、裂けた傷口から血が噴き出しそうだったから、

「うん……。じゃ、切るね」
「気をつけて帰ってね。暗い所歩かないで」
「うん」

 これでいい──

 だが、電話を切った紅美子は、禍難がまだ続いていることを知った。
 携帯を持った手を慌てて裏返したが、左手には何もなかった。










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