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シャイニーストッキング
第20章 もつれるストッキング4     律子とゆかり
 119 視線(11)

 もう彼、大原浩一を獲られてしまったであろう…

 わたしは松下秘書の視線に、その勝ち誇ったかの様な目の色に、そう思い、確信してしまう。

 この対峙の場…

 彼の微妙な狼狽えの態度の様子…
 
 そして彼女の観察するかの様なわたしに向けているこの視線…

 それらが全てを物語っているのだ。

「……………」

 わたしはその彼女からの視線を外し、まるで勝ち誇ったかの様な昨日、今日の新潟出張の経緯の説明を聞きながらそう逡巡し…
 焦燥の想いに絶望を感じていた。

 そしてまた…
 やっぱりこの大原常務就任という、性急な彼の出世の裏、ウラには、わたしには図り知れない大きく、黒い、限りなく黒い企てが…
 山崎専務絡みの企てが潜んでいるのであろう、とも浮かんできていたのである。

 そもそもがこの松下律子という秘書就任の、本社で都市伝説並みに誠密やかに噂されている彼女の謎の存在と、彼の常務就任からまだ四日目という僅かな短期間での彼女との疑惑…
 それがその山崎専務絡みの大きな企てじゃないと説明が付かないのではないのか。

 いくらなんでも僅か四日目である…
 この松下秘書が勝ち誇った目をしてくるほど、そう簡単には彼が陥ちるはずがない。

 いや、あり得ない…
 ただ単なる彼のストッキングフェチという嗜好からの遊びの、軽い浮気心からの関係ならば分かるのだが、まさかの本気の浮気とは考えられないのだ。

 そのくらいにわたしと彼は、いや、わたしは彼からの愛情を実感していた…
 いや、伝わってきていたから。

 すると急に、ザワザワと心が揺らいできた…

 あ、あのシャネルの残り香の変化…

 まさか…
 



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