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埋み火
第3章 跳ね火
 霧子が機嫌を損ねると、博之はいつも自分から後日話しかけることがなかなかできなかった。

 そういう博之の気の弱さがよけい霧子を怒らせることをわかっていながら、あの異常に疲れた日やっと電話をかけることができたのになぜか半月ぶりの電話を泣きながら切られて以来、ずっとまた連絡を取ることができなかった。

 つむじを曲げた発端が夏休みの家族旅行なのはわかっている。

 何度ももう妻とは久しく夜の生活もないとは言ってあるし、子供もいるのに旅館で妻といちゃつくわけもないことくらいわかるだろうという呆れもあった。

 しかし、実際に霧子のことはどこにも連れていってやれない中で家族とは旅行に出かけているのだからそれを責められたくなくて連絡をとりにくいまま九月に入り、シルバーウィークを経て十月には寝取られていたのをカミングアウトされたのだ。

 基本的に電話は自分からしかかけないが、いつもの時間に霧子から非常に珍しく電話をくれたのでほっとして運転しながら出たら、かなりの威力がある爆弾を落とされたという結果だ。
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