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鬼ヶ瀬塚村
第5章 宗二

『あの坂道には絶対いぐな?わがっだな?』
吾朗さんがようやく腕を下ろして忠告した。
『熊か何かが出るんですか?』
長時間腕を上げ続けたせいか、吾朗さんは少し震えていた。
足腰はシッカリしているとは言え、やはり辛かったらしい。
首に巻き付けた手拭いで顔をこすると吾朗さんは
『熊なんがじゃすまねぇもんもあんだ。おめは知らんでいッ!』
と一喝した。また唾が僕の顔に飛んだ。酒臭い…。
野犬や猪だとか攻撃的な生き物がいたって不思議ではないな、僕は広がる田園風景を改めて見ながら思った。
チリンッ!チリンッ!
金属音が聞こえ、顔を向けると大きな麦わら帽子を被った人物が自転車でこちらに向かっているのが見えた。
前部にあるカゴには野菜が詰め込まれているのか、いびつに歪み青ネギが顔を覗かしている。
『おおぅッ!宗二が!!』
吾朗さんがよたよたと自転車へと近付く。
自転車は耳をつんざくような不快なブレーキ音を立てて僕と吾朗さんの間で止まった。
『田中さんですか?』
日焼けで色褪せた麦わら帽子の中から男性の声がした。かすれて少し弱々しい声色だ。
吾朗さんがようやく腕を下ろして忠告した。
『熊か何かが出るんですか?』
長時間腕を上げ続けたせいか、吾朗さんは少し震えていた。
足腰はシッカリしているとは言え、やはり辛かったらしい。
首に巻き付けた手拭いで顔をこすると吾朗さんは
『熊なんがじゃすまねぇもんもあんだ。おめは知らんでいッ!』
と一喝した。また唾が僕の顔に飛んだ。酒臭い…。
野犬や猪だとか攻撃的な生き物がいたって不思議ではないな、僕は広がる田園風景を改めて見ながら思った。
チリンッ!チリンッ!
金属音が聞こえ、顔を向けると大きな麦わら帽子を被った人物が自転車でこちらに向かっているのが見えた。
前部にあるカゴには野菜が詰め込まれているのか、いびつに歪み青ネギが顔を覗かしている。
『おおぅッ!宗二が!!』
吾朗さんがよたよたと自転車へと近付く。
自転車は耳をつんざくような不快なブレーキ音を立てて僕と吾朗さんの間で止まった。
『田中さんですか?』
日焼けで色褪せた麦わら帽子の中から男性の声がした。かすれて少し弱々しい声色だ。

