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鬼ヶ瀬塚村
第2章 出発から村人の出迎え迄
、フロントガラスに視線を誘導され立ちはだかりそそりたつ山々の根元を見つめた。

『あったでしょ?真っ赤な屋根瓦に…ほら鐘の塔が…』

山裾に確かに見事な日本式家屋が見えた。まるでどこぞの高級な旅館施設のようだ。
他の家もどれもこれも大きく立派だが、村長一家となるとあれほどになるらしい。遠くから見たって子供の隠れんぼには1日と飽きない場所だろうとわかる。

『随分立派だね』

『田舎だもん。いくらでも土地あるわよ。後そこらの山もうちの土地なんだってさ』

『凄いね真理子さん』

言いながら僕は再び一物の不安に薪をくべていた。不安は爛々と燃え盛り僕の顔を焼かんとする。熱い熱い不安の炎だ。

『僕、大丈夫かな?』

『何が?』

『いや…ほら、僕なんかがお見舞いなんて…』

『………』

真理子さんは黙っていた。目的地を目前にして車内は嫌な空気を纏ってしまった。僕の責任だ。せっかく真理子さんの親族が招待してくれたのだ。きちんと挨拶もして、そして何なら僕だけ東京に帰ればいい。

それに僕の仕事を知ってもらう為にも過去に描いた漫画だって持参したんだ。随分昔に描いた健全なやつだけれど…。

僕は少し甘い期待をしながら後部座席側に身体をひねり、ボストンバックに手を伸ばそうとした。
その時だった。
キキキキキーーーッキュルキュルキュルッ!!!
真理子さんが深くブレーキを踏み込んだ。
サーフは大きく円を描くように右回りし、ヒマワリ畑の土手に頭を突っ込んだ。

僕は後部座席へ身体をひねっていたものだから、随分身体を宙に浮かせてダッシュボード部分に額をぶつけてしまった。

突き刺すような激痛が額を襲い、同時に眼鏡が嫌な音を立てた。
本能的に目をつむたっけれど、目蓋の上が痛い。

『…真理子さん…?』

僕はハンドルに頭を埋める彼女に手を伸ばそうとした。

『あんのじょこがきがぁ!!!あぶねででまいが言っとるじゃろが!!!』

真理子さんがそう叫びながら顔を上げた。
今まで聞いた事のない真理子さんの鬼ヶ瀬塚村の言葉…僕は伸ばしかけた手を止めて真理子さんを凝視した。

眼鏡がずれ、歪んだ視界の先、真理子さんはシートベルトを強引に外そうとしていた。
そして引きちぎるような勢いでそれを外すと車外へ飛び出して行った。
開け放たれたドアのすぐそこには車の圧力で折れたヒマワリが重なりあっていた…。
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