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エリュシオンでささやいて
第7章 Overture Voice
 

「記憶がない、と?」

 朝霞さんが、訝しげに女帝に聞く。

――朝霞は飄々として切り抜けるだろう。だから心理作戦で、動揺を見る。

 しかし、AOPについては怪訝な顔をしている朝霞さん。
 これが演技なら、テレビで見る俳優さんの半数は大根だ。

「ええ。不思議なことに、甘い香りがあたりに残っていて。それはベリーのような、ん……違いますわね、私が使っている化粧水みたいな匂いでしたわ」

「どんな匂い?」

「ええと……柘榴の匂いです。柘榴、ご存知です? 美容にいいんですけれど」

 さすがは女帝、にこやかな微笑みで自然に尋ねている。

「柘榴に匂いあったんだ」

 朝霞さんも笑う。

「確かに美容効果が高いものとして有名なことは知っているけれど、流行り物に疎い俺は、柘榴は匂いがしないものだと思っていたよ」

「では、どんなイメージを?」

 早瀬の質問に、朝霞さんは少し考えるようにして言う。

「キシモジンって、知ってる?」

 すると裕貴くんが手を上げた。

「知ってるよ、俺、雑司ヶ谷のキシモジン堂で七五三やったから! 名前にインパクトあるよね」

「きみは雑司ヶ谷付近なのか、自宅は」

「池袋の外れだけれどね」

 ……そうなんだ。

 で、キシモジンって、どんなひとなんだろう。

 すると早瀬が、両肘をテーブルにつくようにして言った。
 あたしに顔を向けて。

「上原がきょとんとしているから説明すると、鬼・子・母・神の漢字があてられた鬼子母神はインドでは訶梨帝母(かりていも)と呼ばれる女神で、五百人居るとも千人居るとも言われる、自分の子供を養うために人間の子供を攫って食べた残虐な神と言われている」

 早瀬がなんでそんな話を知っているんだろう?

 音楽家は博学らしい。

「そこで釈迦が、彼女の子供のひとりを攫って隠したら、とても悲しみ嘆いたそうだ。ひとりの子供でもいなくなったらそんなに嘆くのなら、子供を食われた父母の嘆きはいかほどだろうか、と諭して帰依させたとか。雑司ヶ谷鬼子母神堂の鬼の字は、上にツノがない漢字をあてているそうだ。鬼ではなくなったから、と」
 
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