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可愛いひと
第1章 突然
その日も、悪い夢を見た。
どんな夢だったのかは覚えていない。まるで頭が記憶するのを拒むかのように忘れてしまう。ただ、起きたときの寝汗や呼吸の荒さから、普通の夢ではなかったことがわかる。
馴れ合いのアラーム音に起こされ、年中職員募集中の階下の事務所へと降りる。事務所といっても、従業員は俺一人だ。零細探偵事務所の仕事なんて、やりたがる人間はまずいないだろう。
吸殻が山を築く灰皿に更に吸殻を積み上げるべく、煙草に火をつける。百円ライターの調子が悪くてイライラした。

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