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第37章 欲しいもの

彼女の身体を、こうして抱き締めるどころか。
彼女の髪に、耳に、額に、頬に、接吻するだけじゃ飽き足らず。
いつも、いつも、惹かれてた、その唇。
すぐさま奪い去り、自分の気の済むまま、蹂躙してやりたい。
すぐさまこの場に押し倒し、唇どころか、彼女の全てが欲しかった。
華夜子をきつく、強く、抱き締めながら。
そんな脳裏や腕の力とは裏腹に、華夜子の頬に掠めては触れる陸の口付けは、例えようもなく優しかった。
いくらなんでも拒絶される－その覚悟で触れた、頬。
けれど。
腕の中の彼女は、大人しく、されるがまま、だった。
初めて触れた際には流石に一瞬震えたが、あとはただ静かに、ついばむかのような接吻を受け入れている。
あまつさえ、時折。
切なそうな吐息を零しながら。