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蕩けるようなキスをして
第36章 待ち伏せ
午後の講義が急遽休講となった。
大学を出ようと学生玄関へ向かっていれば、出入り口付近の廊下に背を預ける彼を発見する。
擦れ違う女子学生の興奮した甲高い声や、胸をときめかせている眼差しなどまるで眼中にない風に、スマートフォンを操作している。
彼を認めるや否や。
右隣りを歩いていた留以の影に隠れるように、華夜子は瞬時に身体を縮こませた。
このまま気付かれずに、大学の外へ出たい。
しかし、その為にはどうしても、彼を横切る必要があった。
華夜子の挙動不審に、左隣りにいた乃愛の口角が意地悪く上がる。
-何?喧嘩でもしたの?
歩きつつ、小声で問われる。
答える代わりに、華夜子は乃愛のワンピースの袖を引っ張った。
愉快そうに、乃愛はこっそり笑みを零し、華夜子の手を握り締める。
一歩、
また、一歩。
彼との距離が狭まってゆく。
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