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蕩けるようなキスをして
第30章 友達以上
一際目を惹く彼は、どこへ行くにも、注目の的。
頭上から、爪先まで、全身を確認され。
遠巻きの、ひそひそ話。
一緒に歩く私まで、同じように扱われ。
またか-うんざりしつつ、手を繋いだ隣りの相手を見上げる。
周りのそんな喧騒などお構いなしに-いや、まるで見えても、聞こえてもいないかのように。
涼しい顔で微笑み返す彼を、改めて尊敬したものだった。
もうすっかり、慣れっこ-いや、慣れざるを得なかったのだろう。
他人をいちいち気にしていたら、いくら彼と言えども、身が持たない。
行く先々で、聞こえてた女子の歓声。
それらとおんなじざわめきが今、背後から聞こえてる。
鼓動が、高まる。
最後に逢った日から、十日(とおか)ぶり。
食事の載ったトレイが、空いてた隣りのテーブルに置かれた。
椅子を引き、座る動作に乗じて、耳元でそっと、囁かれた。
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