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蕩けるようなキスをして
第22章 今はいない彼
早くこの場から立ち去りたいのに、出来ない。
この俺を本気にさせた女から。
この俺に本気で惚れさせた女の目の前から。
いなくならなきゃいけない-そう、思うのに。
未練たらたらで、一歩がどうしても踏み出せない。
その整い過ぎた横顔でだんまりを決め込むのは、今度は、彼の番だった。
子供っぽい態度かな-思うが、身体が言う事を聞いてくれない。
これだから年下の男は-呆れられてるかもしれない。
もう頭の中は色んなどす黒い感情で、ぐちゃぐちゃだった。
ほとほと自分に嫌気が差し、再び深い深い溜め息を吐(つ)こうとした時、
「陸」
消え入りそうな、自分を呼ぶ、声。
こんなにも自己嫌悪の最中(さいちゅう)なのに、彼女の声には、即座に反応してしまう。
情けないけど、応えてしまう。
陸の瞳に、喜びの色が灯る。
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