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第72章 最愛

先にからかったのは自分なのに。
そんな自分の悪さを棚に上げて。
こんなに優しいキスを与えているのに。
こんなに優しく囁いているのに。
それでも何も言ってくれない彼女に、苛立ちを覚えてしまう。
焦れったくて仕方がない。
「謝ってるだろ。いい加減機嫌直せよ」
「…どうだか」
そろそろ機嫌を直してやろうかな－華夜子が最後の可愛くない返答をすれば、身体を背後に倒され、ベッドに仰向けになった。
その状態で、組み敷く陸に深く口付けられる。
もう、意地なんか張ってられない。
もう、許さずにはいられない。
こんなに「好き」が溢れるキスをされたなら－。
ようやく唇が離れ。
そっと睫を開ければ、自分を見下ろす茶色の瞳は微笑んでいた。