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蕩けるようなキスをして
第60章 T
薄っすらと目を開けた直後、違和感を覚えた。
でもそれがなんなのか、すぐには分からない。
いつもの見慣れた自分の部屋ではない。
今、横たわってるこのベッドも、自分がいつも寝ているものとは違う。
思考が働き出して数秒後、ようやくそれに気付く。
やがて、もうひとつの発見。
ベットのサイドフレームに凭(もた)れ、こちらに背を向けるように座ってる彼を発見する。
その背中を、じっと見詰める。
どうやら、スマートフォンを弄っているようだった。
何見てるんだろ-息を潜めて背中越しに覗こうとすれば、なんの前触れもなく、彼が後ろを振り返った。
覗き見しようとしていた罪悪感も手伝い、華夜子は息を呑み、目を見開いた。
ベッドに横たわる華夜子のすぐ側まで身を乗り出し、陸は言った。
「スマホの画面に映る影が動いたから-」
-華夜が起きたのかなって思った。
まだ驚きを隠せない様子の華夜子に説明し、陸は笑った。
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