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蕩けるようなキスをして
第59章 蕩ける夜
もう、どんなでもだめだった。
もう、彼女じゃなければだめだった。
もう、彼女以外はいらなかった。
ようやく人並みに、たったひとりに本気になれたかと思えば。
そのただひとりは、高嶺の花。
相応の女にしとけばいいのに。
身の程知らずにも、そんな女なんか欲しくなくて。
この腕に抱きたい。
この腕の中で愛したい。
夜毎願ったのは、彼女だけ。
夜毎想像したのは、彼女とだけ。
まだ触れているだけなのに。
まだ繋がっていないのに。
まだ一度だって、自分の欲を放っていないのに。
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