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蕩けるようなキスをして
第9章 華夜子
心配そうに、陸がこちらを窺っていた。
なんでもない-言って、華夜子は急ぎ、弁当箱の蓋に手をかける。
華夜子-声を掛けようとし、陸は言葉を消す。
「華夜子…さんって、呼べばいい?」
僅かな苦笑いを含んだそれで、陸は彼女を問うように、見た。
華夜子は慌て、彼に自分の気持ちを伝えようとした。
けれど、陸が自身のやるせない胸の内を語り出す方が、僅かに早かった。
華夜子の、蓋を開ける手が、止まる。
「俺は、華夜子より一歳下で。それは、覆せない事実で。同じ年に並べるものなら並びたいけど、それだけはどうしても不可能で。だから、年の事を言われると正直悔しいけど、なんも言い返せない。年下なんだからとか、年下のくせにとか。…だけど、華夜子が嫌がる事はしたくない。だから、華夜子がどうしてもだめだと言うのなら…呼ぶのは、今日で最後にする」
思えば。
一週間前の、あの日。
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