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蕩けるようなキスをして
第55章 待ち人来ず
気温がどんどん下がる中、これ以上、ここに留まり続ける意味がある?
寒さを堪え、あと三時間待ったところで、結果は火を見るよりも明らかなのに。
これ以上自分を惨めにしたくないのなら、せめて今からでもいいから、踵を返した方がいい。
心は見えない血を流し続けてる。
失血する前に帰った方がいい、絶対に-頭の片隅で忠告する、もうひとりの自分。
「…もう、だめなのかな」
思わず、本音が零れる。
本当になるのが怖くて、ずっと我慢してきた。
けれど。
こうなってくると。
もう、こうなってしまうと。
弱音を吐かずにはいられなかった。
吐露せずには、やってられなかった。
『もういい』と、彼女を遮断してしまったあの瞬間、決まってしまっていたのだろうか。
「俺達…もうだめなのかな」
遂に、陸はそのひとことを呟いた。
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