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蕩けるようなキスをして
第49章 予感
「俺…?」
まさか自分に向けられるとは思ってなかった陸は、本気で少し驚いている様子だった。
「もしも私に何かをって、思ってくれているのなら。私も陸に何かをあげたいな」
「俺は-」
戸惑いの後(のち)。
陸は微かに口元を緩め、呟いた。
「俺は別にいいよ。俺が勝手に華夜に何かあげたいなって、思ってるだけだし」
「でも…」
「それに。一番欲しいものは、もう貰ってる」
「え…?」
彼から何かを貰った事はあっても。
彼に何かをあげた記憶は-なかった。
いつも貰いっぱなしだった事実に、改めて気付き、申し訳ない気持ちでいっぱいになる。
身に覚えなどまるでないのに、彼は何を-華夜子の戸惑いに、一呼吸置き。
「華夜を貰った」
-だからもうこれ以上欲しいものなんて、ない。
照れ隠しに、波打つ落栗色の前髪を弄びながら-陸は、告げた。
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