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第7章 噂の的

脳裏に浮かぶのは、彼の声。
脳裏を掠めるのは、彼の顔。
－すげー美味しいよ、華夜子。
あれは本心から言ってくれていた。
あれは本当の笑顔だった。
私だって、それくらいは分かる。
私じゃない誰でも作れる、なんの変哲もない、ただの卵焼きなのに。
あんなに嬉しそうに、美味しいって、食べてくれた－。
また、何を思っているの、私。
華夜子は、そんな自分を叱咤するように、頭を振った。
卵焼きなんて、そんな事、どうでもいいのに。
あのひとは、私を。
あのひとは、私の心の中に断りもなく勝手に侵入し、掻き乱してゆく、いつだって。
止めて。
もう、止めて。