この作品は18歳未満閲覧禁止です

- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第28章 第十一話 【螢ヶ原】 其の四

しかも、伊勢次の言うように、伊勢次はもう長い間、お彩の身体に指一本触れずに過ごしてきたのである。少なくとも伊勢次は〝待つ〟と言った約束は守ったといえるだろう。
これでは、伊勢次が自分の心をお彩が弄んでいる―と言っても、致し方ない。
お彩は改めて、眼前の男の貌を見た。江戸を出てから、見違えるように精悍さを増した伊勢次は、良人としても申し分ないだろう。
何より、思いやり深く、優しい。お彩がずっと夢見ていた温もりのある家庭を与えてくれた。これ以上、伊勢次を拒むことは許されないように思えた。
―お彩ちゃん、どれだけ一緒にいても、俺たちは、けして近付くことはできねえのかい? 俺じゃあ、駄目なのか。
無言の問いかけに、お彩は胸を衝かれた。
これでは、伊勢次が自分の心をお彩が弄んでいる―と言っても、致し方ない。
お彩は改めて、眼前の男の貌を見た。江戸を出てから、見違えるように精悍さを増した伊勢次は、良人としても申し分ないだろう。
何より、思いやり深く、優しい。お彩がずっと夢見ていた温もりのある家庭を与えてくれた。これ以上、伊勢次を拒むことは許されないように思えた。
―お彩ちゃん、どれだけ一緒にいても、俺たちは、けして近付くことはできねえのかい? 俺じゃあ、駄目なのか。
無言の問いかけに、お彩は胸を衝かれた。

