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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第27章 第十一話 【螢ヶ原】 其の参

長い初夏の陽も暮れ、土間にも薄い闇が立ち込めていた。ひっそりと立つ市兵衛は、あたかも薄い闇から抜け出してきたようにも、その闇そのものが凝って人の姿をなしたようにも見えた。
市兵衛の身体がユラリと動いた。
お彩は無意識の中に声にならない声を上げた。闇の化身のような男が怖くてたまらない。
なまじ容姿が端麗なだけに、冷ややかさを纏ったその美貌は氷の像のようでさえある。市兵衛が次第に近づいてくる。お彩はその凍てついた月のような美しさに圧倒された。恐怖と魅惑、まさにその相矛盾する感情に支配されていた。
こんなときなのに、お彩は市兵衛の美しさに魅了されていた。まるで身体が縫い止められでもしたかのように、微動だにしないのは、けして恐怖心からだけではなかった。
市兵衛の身体がユラリと動いた。
お彩は無意識の中に声にならない声を上げた。闇の化身のような男が怖くてたまらない。
なまじ容姿が端麗なだけに、冷ややかさを纏ったその美貌は氷の像のようでさえある。市兵衛が次第に近づいてくる。お彩はその凍てついた月のような美しさに圧倒された。恐怖と魅惑、まさにその相矛盾する感情に支配されていた。
こんなときなのに、お彩は市兵衛の美しさに魅了されていた。まるで身体が縫い止められでもしたかのように、微動だにしないのは、けして恐怖心からだけではなかった。

