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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第27章 第十一話 【螢ヶ原】 其の参

長屋の住人たちは、お彩の腹の子は伊勢次の種だと信じて疑っておらぬようである。急に現れて一緒に暮らすようになったお彩を好意的に受け容れ、伊勢次などは〝まァ、勿体ないほどの器量よしの奥さんを貰ったねェ〟と年かさの女房連中から盛んにひやかされている始末だ。
外に出るときは前屈み気味の姿勢で、なるべくお腹を手で隠すように歩いてはいても、流石に六カ月ともなれば、人の眼はごまかしようもない。
―ほんに、伊勢次さんもやるときにはやるんだねえ。別嬪の嫁さんが押しかけてきたと思ったら、さっさと赤ン坊までこしらえちまうなんてさ。
と、これもまた、気は好いが口の悪い女房たちから上がった声だ。
外に出るときは前屈み気味の姿勢で、なるべくお腹を手で隠すように歩いてはいても、流石に六カ月ともなれば、人の眼はごまかしようもない。
―ほんに、伊勢次さんもやるときにはやるんだねえ。別嬪の嫁さんが押しかけてきたと思ったら、さっさと赤ン坊までこしらえちまうなんてさ。
と、これもまた、気は好いが口の悪い女房たちから上がった声だ。

