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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第27章 第十一話 【螢ヶ原】 其の参

今夜は、伊勢次の好物の鰯の焼いたのと、すまし汁、青菜のおひたしだ。伊勢次は何を作っても、大仰に見えるほど歓んできれいに平らげるので、お彩は毎日、食事を作るのが愉しみになりつつある。
夕刻、伊勢次の住まいからは魚を焼く匂いが流れた。何とも空きっ腹を刺激する匂いである。この頃は既にお彩の腹の子は六月(むつき)になっており、悪阻はほぼ落ち着いていた。が、今度は裏腹に、これまで食べられなかった分を一挙に取り戻すかのように旺盛な食欲が出て、いっときは痛々しいほど痩せていたお彩は少しふっくらとした。
まるで喉の奧からもう一本の手(多分、それは腹の子の手に違いない)が伸びて出て、お彩でさえ気付かぬ間に皿の上のものを次々に掴み取って食べてしまうかのような食べっぷりである。
夕刻、伊勢次の住まいからは魚を焼く匂いが流れた。何とも空きっ腹を刺激する匂いである。この頃は既にお彩の腹の子は六月(むつき)になっており、悪阻はほぼ落ち着いていた。が、今度は裏腹に、これまで食べられなかった分を一挙に取り戻すかのように旺盛な食欲が出て、いっときは痛々しいほど痩せていたお彩は少しふっくらとした。
まるで喉の奧からもう一本の手(多分、それは腹の子の手に違いない)が伸びて出て、お彩でさえ気付かぬ間に皿の上のものを次々に掴み取って食べてしまうかのような食べっぷりである。

