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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第24章 第十話 【宵の花】 其の弐

自分には、そんな力はない。現に、今はこうして市兵衛のことをたまらなく怖ろしいと思い始めている。いつ、また、どんな風に態度を豹変させるか判らぬ男から一刻も早く逃げ出したいと思うほどに。
お彩は、いつしか恐怖にすっぽりと呑み込まれていた。
一陣の強い風がお彩の傍を吹き抜けた。一斉に薄紅色の花片が舞い上がり、それは部屋の中まで舞い込んでくる。薄紅色の雪を浴びながら、お彩は両手で自分の身体をギュッと抱きしめた。
不安に立ち尽くすお彩を、おみよが気遣わしげな表情で見守っている。どこからか、恩女のけたたましい笑い声が聞こえてくるような気がして、お彩は思わず両手で耳を押さえた。その間にもいったんは治まっていた吐き気が再び戻ってきて、お彩は一瞬、意識が遠のいた。
お彩は、いつしか恐怖にすっぽりと呑み込まれていた。
一陣の強い風がお彩の傍を吹き抜けた。一斉に薄紅色の花片が舞い上がり、それは部屋の中まで舞い込んでくる。薄紅色の雪を浴びながら、お彩は両手で自分の身体をギュッと抱きしめた。
不安に立ち尽くすお彩を、おみよが気遣わしげな表情で見守っている。どこからか、恩女のけたたましい笑い声が聞こえてくるような気がして、お彩は思わず両手で耳を押さえた。その間にもいったんは治まっていた吐き気が再び戻ってきて、お彩は一瞬、意識が遠のいた。

