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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第24章 第十話 【宵の花】 其の弐

たっぷりと重なり合った花、また花―。
夜、月光を浴びて妖しく雲母に輝いていた花は、今、はんなりと薄紅に色付いて、まるで恥じらって頬を染めた乙女のような初々しさだ。
どこからともなく風が吹き、満開の桜の枝を揺らすと、はらはらと雪のように白い花びらが散った。お彩はそうやって長い間、咲き誇る桜の花を見つめていた。
「内儀さん、私ども古くより京屋に奉公する者は皆、内儀さんが旦那様の新しいお力になって下さることを望んでおります。旦那様はもう十分すぎるほどお苦しみになられました。やっと心から愛する方とめぐり逢われたのですから、これからはお幸せになって頂きたいと願っております」
おみよの声が遠く聞こえる。
お彩は無言で桜の花を見つめている。
夜、月光を浴びて妖しく雲母に輝いていた花は、今、はんなりと薄紅に色付いて、まるで恥じらって頬を染めた乙女のような初々しさだ。
どこからともなく風が吹き、満開の桜の枝を揺らすと、はらはらと雪のように白い花びらが散った。お彩はそうやって長い間、咲き誇る桜の花を見つめていた。
「内儀さん、私ども古くより京屋に奉公する者は皆、内儀さんが旦那様の新しいお力になって下さることを望んでおります。旦那様はもう十分すぎるほどお苦しみになられました。やっと心から愛する方とめぐり逢われたのですから、これからはお幸せになって頂きたいと願っております」
おみよの声が遠く聞こえる。
お彩は無言で桜の花を見つめている。

