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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第23章 第十話 【宵の花】 其の壱

しかし、一人布団の中に残されたお彩の頬には幾筋も涙の跡があった。片手でお彩の両手首を掴んだ市兵衛は、もう片方の手でお彩の帯をほどき、寝衣の前をひらいた。焦らすようにゆっくり巧妙に触れられることで、いつしか抵抗していたお彩は、すっかり市兵衛の調子に引き込まれていた。心では良人を拒否しながらも、お彩の身体は市兵衛の烈しい愛撫に十分に応えていた。そのことに改めて気付き、お彩の心は沈んだ。
今朝方の市兵衛は手込めも同然のお彩を抱いた。その荒々しい求め方から伝わってくるのは愛情ではなく、ただ獣じみた欲望とやり場のない怒り、鬱屈した感情のみであった。
一体、何が良人をああまで烈しく駆り立てたのであろうか。もしかしたら、自分が京屋に嫁いだのは間違いであったのかもしれない。
今朝方の市兵衛は手込めも同然のお彩を抱いた。その荒々しい求め方から伝わってくるのは愛情ではなく、ただ獣じみた欲望とやり場のない怒り、鬱屈した感情のみであった。
一体、何が良人をああまで烈しく駆り立てたのであろうか。もしかしたら、自分が京屋に嫁いだのは間違いであったのかもしれない。

