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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第23章 第十話 【宵の花】 其の壱

市兵衛に惚れて、もう自分の気持ちをどうしようもないほど持て余すようになって、恥も外聞もなく縋ったのは、いつのことだったろうか。そう、あれは市兵衛が二度めに登楼した夜であった。
―ねえ、旦那。旦那のような良い男を見たのは初めてなんだよ。あたしを抱いてよ。
本まがきの稼ぎ頭、お職を張るという誇りも意地もすべて捨てて、生まれて初めて男に取りすがった。甘えるような声音で媚さえ滲ませて男を見上げた。こうすれば、それまで落ちなかった男はいなかった。だが、市兵衛は静かなまなざしで若菜太夫を見つめて言った。
―私はお前さんのそんな真を受け取れるような男じゃねえ。気持ちはありがてえと思うが、もしそんなことを期待しているのなら、悪いが以後はここに来るのは止そう。
―ねえ、旦那。旦那のような良い男を見たのは初めてなんだよ。あたしを抱いてよ。
本まがきの稼ぎ頭、お職を張るという誇りも意地もすべて捨てて、生まれて初めて男に取りすがった。甘えるような声音で媚さえ滲ませて男を見上げた。こうすれば、それまで落ちなかった男はいなかった。だが、市兵衛は静かなまなざしで若菜太夫を見つめて言った。
―私はお前さんのそんな真を受け取れるような男じゃねえ。気持ちはありがてえと思うが、もしそんなことを期待しているのなら、悪いが以後はここに来るのは止そう。

