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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第23章 第十話 【宵の花】 其の壱

お彩はひしひしと孤独感を憶えていた。居間のお彩は京屋の中でたった一人、孤立している。奉公人たちは皆、態度だけは慇懃であり、内儀であるお彩にはいつでも低姿勢ではあった。が、その眼にはあからさまな蔑みが浮かんでいる。お彩が何を話しかけても、よよそよそしく冷淡でとりつく島もなかった。
お彩は自分の部屋に戻ると、そっと障子戸を開けた。そこは小さいながらも庭に面しており、小庭の片隅には桜の樹が一本植わっている。樹齢も定かではない古樹には何か風格さえ漂っているような気がする。そろそろ忍び寄り始めた夕闇の中に、白っぽい花を浮かび上がらせていた。
春の夕陽が空の西の端を茜色に染め上げる。呆気ないほどの速さで残照は空を茜色から黄金色に染め変え、やがて空は夜の色にすっかり塗り込められた。
お彩は自分の部屋に戻ると、そっと障子戸を開けた。そこは小さいながらも庭に面しており、小庭の片隅には桜の樹が一本植わっている。樹齢も定かではない古樹には何か風格さえ漂っているような気がする。そろそろ忍び寄り始めた夕闇の中に、白っぽい花を浮かび上がらせていた。
春の夕陽が空の西の端を茜色に染め上げる。呆気ないほどの速さで残照は空を茜色から黄金色に染め変え、やがて空は夜の色にすっかり塗り込められた。

