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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第22章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱

それでもなお、お彩が敢えて自分からこの話を切り出したのは、ひとえに父がいまのわ際に遺した台詞が後押ししたからに相違なかった。
また沈黙が降りた。
お彩にとっては、先刻以上に長いようにも思える。
市兵衛が突如として動いた。片手でそっとお彩の両手首を掴み、もう片方の手で頬骨の輪郭を辿る。ゆっくりとお彩の顔を撫でながら、市兵衛は言った。
「しばらく見ない間に、また綺麗になった。もう、とっくに他の男に持っていかれてしまったかと思って諦めていたよ。改めて、今、ここでもう一度言おう。―私と所帯を持ってくれねえか」
市兵衛の優しさが心に滲みた。
また沈黙が降りた。
お彩にとっては、先刻以上に長いようにも思える。
市兵衛が突如として動いた。片手でそっとお彩の両手首を掴み、もう片方の手で頬骨の輪郭を辿る。ゆっくりとお彩の顔を撫でながら、市兵衛は言った。
「しばらく見ない間に、また綺麗になった。もう、とっくに他の男に持っていかれてしまったかと思って諦めていたよ。改めて、今、ここでもう一度言おう。―私と所帯を持ってくれねえか」
市兵衛の優しさが心に滲みた。

