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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第22章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱

ひとしきり言葉を交わした後、唐突に静寂が訪れた。
「元気そうで良かった」
その静けさを市兵衛が破った。
市兵衛は、穏やかな眼でお彩を見つめた。
こうしていると、出合茶屋の一室であれほど烈しく求め合ったのが遠い昔のように思える。
お彩は唇を噛みしめた。
今言わなければ、きっと後悔する。
「私の方からあんなことを言い出しておきながら、こんなことを申し上げると、多分あなたは呆れなさると思います」
それでも、勇気を振り絞った。
―その男に心から惚れているなら、想いを貫け。
父の最後の言葉が、ともすれば挫けそうになる心を支えてくれる。
「元気そうで良かった」
その静けさを市兵衛が破った。
市兵衛は、穏やかな眼でお彩を見つめた。
こうしていると、出合茶屋の一室であれほど烈しく求め合ったのが遠い昔のように思える。
お彩は唇を噛みしめた。
今言わなければ、きっと後悔する。
「私の方からあんなことを言い出しておきながら、こんなことを申し上げると、多分あなたは呆れなさると思います」
それでも、勇気を振り絞った。
―その男に心から惚れているなら、想いを貫け。
父の最後の言葉が、ともすれば挫けそうになる心を支えてくれる。

