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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第21章 第九話 【夫婦鳥~めおとどり~】 其の壱

お彩は、ずっと横たわったままの父を眺めた。恐る恐るその額に手を触れると、愕くほど熱い。かなりの高熱が出ている証である。
お彩が立とうとすると、おきわが気を利かして井戸から冷たい水を汲んできてくれた。
お彩はともすれば溢れそうになる涙をこらえながら、盥に汲んだ水に浸した手拭いを絞り、父の額に載せた。
力なく両脇に降りたままの父の手をそっと取る。この手が名人芸と呼ばれる数々の簪を作り出したのだと、感慨を込めて見つめた。しなやかな指を愛おしく見つめていたその時、左手の内側の一部に擦り傷があるのに気付いた。とうに乾いていたが、出血したのだろう、わずかな血がこびりついている。
お彩の眼にまた新たな涙が溢れた。
お彩が立とうとすると、おきわが気を利かして井戸から冷たい水を汲んできてくれた。
お彩はともすれば溢れそうになる涙をこらえながら、盥に汲んだ水に浸した手拭いを絞り、父の額に載せた。
力なく両脇に降りたままの父の手をそっと取る。この手が名人芸と呼ばれる数々の簪を作り出したのだと、感慨を込めて見つめた。しなやかな指を愛おしく見つめていたその時、左手の内側の一部に擦り傷があるのに気付いた。とうに乾いていたが、出血したのだろう、わずかな血がこびりついている。
お彩の眼にまた新たな涙が溢れた。

