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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第20章 第八話 【椿の宿】 其の弐

京屋ほどの大店の代替わりは、主の市兵衛の身のふり方だけではなく、大勢の奉公人たちの行く末をも左右する出来事なのだ。そんなことくらい世間知らずのお彩だとて容易に判る。なのに、三十一の若さではるかに年長の呉服商たちから畏怖されるやり手の商人である市兵衛ほどの男が何ゆえ、判らないのだろう。
それに、お彩自身、自分が大店の内儀におさまった姿をどうしても思い浮かべることができない。所詮、市兵衛とお彩は住んでいる世界も生活もすべてが違う。何もかもが違いすぎる。
仮に我が身が京屋に入ったとしても、市兵衛の女房としてうまく立ち回れるとは思えなかった。京屋ぐらいの身代を守るには、内儀としてもそれなりの覚悟が要る。
それに、お彩自身、自分が大店の内儀におさまった姿をどうしても思い浮かべることができない。所詮、市兵衛とお彩は住んでいる世界も生活もすべてが違う。何もかもが違いすぎる。
仮に我が身が京屋に入ったとしても、市兵衛の女房としてうまく立ち回れるとは思えなかった。京屋ぐらいの身代を守るには、内儀としてもそれなりの覚悟が要る。

