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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第13章 第五話 【夏霧】 其の弐

三年辛抱して、どうにも我慢できなくなっちまって、ひとめ逢いたさに倅を連れて江戸に出てきたんです。これが最後と言い訳してね。四日前に言ったように、どこかでは喜六郎さんがあたしの言い分に耳を傾けてくれるんじゃないかなんて、甘いことを考えてましたけど、もう良いんです。たった一刻でも、喜六郎さんのような男にめぐり逢えて、あたしは果報者でした。今は、ただそれだけです」
おきみはそう言うと、微笑んだ。
「あのお店は喜六郎さんが生命の次に大事にしていなさるもんです。店の金を持ち逃げしたあたしが今更こんなこと言える筋合いじゃありませんが、お店のことをよろしくお願いします」
お彩は、その儚げな笑顔に向かって頷くしかない。
おきみはそう言うと、微笑んだ。
「あのお店は喜六郎さんが生命の次に大事にしていなさるもんです。店の金を持ち逃げしたあたしが今更こんなこと言える筋合いじゃありませんが、お店のことをよろしくお願いします」
お彩は、その儚げな笑顔に向かって頷くしかない。

