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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第7章 第三話 【盈月~満ちてゆく月~】 其の壱

男は元々は裏店住まいの鋳掛け屋夫婦の倅として生まれ育った。少年の頃、丁稚奉公に出たのは父のように一生を裏店住まいで終えるのは嫌だったからだという。いつかはいっぱしの商人になって、皆を見返してやるのだと幼い胸に野心を抱いて奉公に励んでいた。
そんなある日、店の金子からその日の売上金が盗まれ、当時丁稚であった彼に嫌疑がかけられた。その理由は男がその日暮らしの鋳掛け屋の倅であったという、ただそれだけのものだった。やがて、その金は手代が遊ぶ金欲しさに盗んだものだと判ったが、男は二度と店に帰るつもりはなかった。人を生まれや育ちだけで判断するような人間たちの許に帰る気はさらさらなかった。
ところが、幼かった彼を優しく諭してくれた女性がいた。
―今、ここで逃げたら、一生下手人扱いされるわよ。たとえ他人が何と言おうと、毅然としていれば良い、心に自分だけの花を咲かせるのよ。一生懸命に生きて、自分なりの花を精一杯咲かせるの。
そんなある日、店の金子からその日の売上金が盗まれ、当時丁稚であった彼に嫌疑がかけられた。その理由は男がその日暮らしの鋳掛け屋の倅であったという、ただそれだけのものだった。やがて、その金は手代が遊ぶ金欲しさに盗んだものだと判ったが、男は二度と店に帰るつもりはなかった。人を生まれや育ちだけで判断するような人間たちの許に帰る気はさらさらなかった。
ところが、幼かった彼を優しく諭してくれた女性がいた。
―今、ここで逃げたら、一生下手人扱いされるわよ。たとえ他人が何と言おうと、毅然としていれば良い、心に自分だけの花を咲かせるのよ。一生懸命に生きて、自分なりの花を精一杯咲かせるの。

