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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第46章 最終話【睡蓮】 四

お彩は仮寝から覚めた時、咄嗟に自分がまだ眠っていて、夢を見ているのかと思った。そう、何度、夢の中で思い描いたことだろう。市兵衛が優しく微笑みかけてくれる夢を。
夢の中の市兵衛は、いつもこんな風に屈託ない笑みを浮かべている。そして、昔のように「お彩」と呼んで、髪を愛おしげに撫でてくれるのだ。
「―お彩」
名を呼ばれて、お彩は呟いた。
「これは夢なの?」
震える手で市兵衛の頬に恐る恐る触れる。
その手を市兵衛が捉えた。
「夢じゃないのね?」
お彩の眼に嬉し涙が溢れた。
夢の中の市兵衛は、いつもこんな風に屈託ない笑みを浮かべている。そして、昔のように「お彩」と呼んで、髪を愛おしげに撫でてくれるのだ。
「―お彩」
名を呼ばれて、お彩は呟いた。
「これは夢なの?」
震える手で市兵衛の頬に恐る恐る触れる。
その手を市兵衛が捉えた。
「夢じゃないのね?」
お彩の眼に嬉し涙が溢れた。

