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ただ、あなたに逢いたくて~心花【こころばな】~
第44章 第十六話 【睡蓮】 弐

初めて膚を合わせた夜、伊勢次は自分の腕の中でひたすら他の男ー京屋市兵衛のことばかりを考えていたお彩の心の真実を知り、絶望の果てに死を選んだのだった。皮肉なことに、お彩は市兵衛以外の男に抱かれ、初めて自分の中のあの男への想いがけして変わらないことを知ったのである。結果として、お彩の取った一連の行動は伊勢次の気持ちを利用しただけだったと言われても、お彩には何の言い訳もできないのだった。
三月ほど前、「花がすみ」が店を閉めざるを得ない状況になった。というのも、喜六郎が昔からの知人の借金の保証人になり、その際、店を抵当に入れてしまったからだ。お彩は富久三という男が金を借りた高利貸しを訪ね、何とか借金の返済の期日を先延ばしして貰えるように懇願したけれど、無駄だった。
三月ほど前、「花がすみ」が店を閉めざるを得ない状況になった。というのも、喜六郎が昔からの知人の借金の保証人になり、その際、店を抵当に入れてしまったからだ。お彩は富久三という男が金を借りた高利貸しを訪ね、何とか借金の返済の期日を先延ばしして貰えるように懇願したけれど、無駄だった。

